芝生の病気には多くの種類があります。まずは症状によって病気の種類を見極めましょう
芝生を育てていると、急に元気が無くなったり、部分的に枯れたりする事があります。そのまま放置していると症状がどんどんと拡大していくこともあります。
このような場合はまず芝生の病気を疑います。
芝生の病気には多くの種類があり、私たち芝生愛好家のレベルでは病気を特定するのは難しい場合があるので、どのように対処していいかわからずに、そのまま放置してしまうことになりがちです。
そこで、このページでは芝生の病気の症状や対処方法、予防方法を紹介しています。
病気を放置して芝生を全滅させないためにも、病気ごとの症状を理解し、適切に「対処」「予防」しましょう。
まずは芝生が病気になる原因や予防方法から解説します。病気ごとの症状や対策方法(殺菌など)を知りたい方は 芝生の主な病気一覧 をご覧ください。
芝生が病気になる原因
芝生は土壌が老化すると病気になりやすくなる
芝生は植えて年月が経過するほど、病気が発生しやすくなります。その理由は芝生の床土(土壌)が年月を重ねるごとに老化していくからです。
芝生を植えてすぐは柔かかった床土も、やがて固くなり通気性や排水性が悪くなり、芝生の耐病性が衰えてきます。また、芝刈り時の刈りカスや枯れた芝生が堆積しサッチの層を作ることで、病原菌が繁殖しやすくなるため、病気の発症が増えてきます。
芝生は本来、丈夫な植物ですが、このように土壌が老化していくに連れ、病気にかかりやすくなっていきます。
芝生の病気を治す方法
病気になったら殺菌剤を散布する
芝生が病気になったらまずは病気の進行を止め、病気が拡大するのを防ぐ必要があります。そのためには病原菌を死滅させる「殺菌剤」を散布する必要があります。
まずは、病気の拡散を止めて、次に、微生物を配合する資材などを散布して弱った芝生の回復を促すことがポイントとなります。
芝生の病気を予防する方法
芝生の病気を予防する方法としては、予防的に殺菌剤を散布する方法と、病原菌が発生・繁殖しにくい環境を作る2つの方法があります。
病気予防として殺菌剤を散布する
早めの対応で病気を予防する
芝生が病気になってしまうと元に戻すには時間がかかります。そこで芝生が病気になる前に、予防的に殺菌剤を散布する方法です。
ただし、同じ殺菌剤ばかりを続けて使用すると、病原菌が殺菌剤に対して耐性を持ってしまうことがあるので、なるべく違う種類の殺菌剤をローテーションで使用しましょう。
芝生が病気にならないための環境づくり
殺菌剤に頼らない環境を作りましょう
芝生は人間と同様で、環境や栄養のバランスが崩れると病気にかかりやすくなります。病気の度に殺菌剤に頼っていても根本的な原因解決にはならず、再発を繰り返す可能性があります。そこで、芝生が病気にならないための環境づくりが重要となってきます。
サッチングで病原菌の繁殖を抑える
病原菌は、主に芝生のサッチ層で繁殖します。サッチ層に水分が多い状態が続くと、病原菌が増殖しやすい環境となるので、サッチング作業で、サッチを出来るだけ取り除きます。
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エアレーションで土壌の通気性や排水性を確保する
土壌の通気性や排水性を保ち、微生物が活発に成長する環境をつくることで、病原菌の繁殖を抑えることができます。また、通気性や排水性がよくなることで、根が呼吸しやすくなり、芝生の耐病性が向上します。
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庭の風通しを良くして湿気が溜まるのを防ぐ
芝生の病原菌は湿気を好む傾向があるので、なるべく庭の風通しを良くします。芝生の周囲の植木を剪定したり、風通しを悪くしているフェンスなどの障害物を改良してみましょう。
水やりの回数を減らしてみる
水やりの回数が多すぎると、常に芝生に湿気が溜まってる状態になるため、病原菌の増殖を助長します。芝生が枯れない範囲で水やりの回数を減らしてみましょう。
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バランスの良い栄養で芝生の耐病性を上げる
芝生の栄養バランスが崩れると、芝生の耐病性が下がることになるので、窒素肥料を与えすぎないようにして、土壌の窒素成分を増やしすぎないようにしましょう。
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芝生の主な病気
芝生に発生する病気には多くの種類があります。そこで、芝生に発生する病気について、どのようなものがあるのかを一部ですがご紹介します。病気ごとに症状と予防・対策用法などを紹介していますので、参考にしてください。
葉腐病
葉腐病にはラージパッチ病とブラウンパッチ病がある
芝生の葉腐病には、暖地型芝生に発生する「ラージパッチ病」と寒地型芝生に発生する「ブラウンパッチ病」があります。
ラージパッチ病(日本芝葉腐病)
発生芝種:日本芝 / 暖地型西洋芝
ラージパッチ病は、日本芝葉腐病とも呼ばれ、日本芝と暖地型西洋芝に発生しますが、特に日本芝で多く発生します。数cm〜10mの大きさでパッチ状に芝生が枯れ徐々に被害を拡大していきます。排水性が良くなかったり窒素が多い土壌が原因となり、気温と降雨がきっかけで、湿度が高い春と秋に病害が発生します。
ラージパッチ病は殺菌剤を使用しなくても対策しやすい病気です。土壌の通気性、排水性の良い土壌を作り、適切な肥料散布を心がけることで、発生を抑えられます。
↓ラージパッチ病について詳しくはこちら
ブラウンバッチ病
発生芝種:寒地型西洋芝
ブラウンバッチ病は西洋芝に発生しやすい病気です。10cm〜1mの大きさでパッチ状に芝生が枯れ、早い速度で病害が進行して被害を拡大させます。葉に斑点やスモーキーリングを発生させることがあります。ラージパッチ病と同様に、排水性が良くなかったり、窒素が多い土壌が原因となり病害が発生します。
ラージパッチ病と同様に、土壌の通気性・排水性の良い土壌を作り、肥料散布を心がけることで発生を抑えられます。夜間の散水も極力避けましょう
↓ブラウンバッチ病について詳しくはこちら
擬似葉腐病
擬似葉腐病には「春はげ病」や「象の足跡」と呼ばれる病気があります
芝生の擬似葉腐病には、その名の通り春に発生する「春はげ病」や梅雨時と秋に発生する「象の足跡」と呼ばれる病気があります。擬似葉腐病は根部への影響は少いので、翌年には問題なく回復する場合があります。
春はげ症
発生芝種:日本芝
春はげ症は、春先にかけて高麗芝に良く発生する病気です。直径10~50cm程度の大きさでパッチ状に剥げたような症状が現れます。病状はゆっくりと進行するため、春はげ症と気づくのが遅れますが、放置しておいても自然と回復することがあります。サッチ(有機物の層)が多く、土壌の窒素量が多い場所によく発生します。
春はげ症は、サッチをできるだけ取り除き適切な肥料散布を心がけることで、発生を抑えられます。
↓春はげ症について詳しくはこちら
象の足跡
発生芝種:日本芝
象の足跡は、特に刈高の高い野芝に多く発生します。直径3cm程の丸い褐色のパッチが発生します。地下まで被害が進行することはないので、翌年に影響を持ち越すことはありません、
象の足跡は、刈高を低くすることで予防することができます。
↓象の足跡について詳しくはこちら
ピシウム菌が原因となる病気
ピシウム菌が原因の病気には「赤焼病」と「ピシウム病」があります
「赤焼病」と「ピシウム病」は両方ともピシウム菌が原因となっている病気ですが、赤焼病は病状の違いから別に分類され、赤焼病以外を「ピシウム病」と呼んでいます。ピシウム菌には150種類以上の種類があります。ここでは代表的な2種類の症状をご紹介します。
赤焼病
発生芝種:寒地型西洋芝
赤焼病(あかやけびょう)は、綿腐病やピシウムパッチとも呼ばれる病気で、発生の兆候を見落としやすく、しかも被害の進行が早いために芝生が全滅してしまうこともあります。台風や夏場の熱帯夜など、高温多湿の条件が揃った時に発生しやすい傾向があります。
台風や夏場の熱帯夜など、高温多湿の条件が揃いそうな時には、予防的に殺菌剤の散布を行います。
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雪腐病
発生芝種:寒地型西洋芝
雪腐病は、北海道や東北地方などの寒冷地で融雪直後にパッチとして現れる病気の総称です。紅色雪腐病(フザリウムパッチ)や雪腐小粒菌核病などがあります。芝生の葉が、円形に黄色から茶色になる症状として現れます。
雪腐病は、冬の間芝生の上の積雪を防ぐことで、予防することができます。アルカリ性の土壌は雪腐病を進行させるために石灰の使用は控えてください。
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その他芝生の病気
さび病、葉枯病、ダラースポット病、フェアリーリング病などが有名
芝生に発生する病気は、上記以外にも多くの種類があります。
さび病
発生芝種:日本芝 / 暖地型西洋芝 / 寒地型西洋芝
さび病は、夏のはじめや秋に高麗芝などの日本芝によく発生する病気です。さび病にはいくつかの種類があり、黄さび・黒さび・冠さび・葉さびなどがあります。日当たりが悪くて湿度が高い場所によく発生します。さび病は、すぐに芝を枯らしてしまうような深刻な病気ではありませんが、放置しすぎても良くありません。
さび病は、環境により自然に復活する場合もありますが、根本的に解決していないと再発する可能性があります。肥料が不足すると発生しやすいので、適切な肥料管理を行うことで予防することが出来ます。
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カーブラリア葉枯病
発生芝種:日本芝 / 暖地型西洋芝
カーブラリア葉枯病は「犬の足跡」とも呼ばれ、梅雨時期によく発生する病気です。最初はこぶし大程度の犬の足跡のようなパッチが発生し、やがて大きな一つのパッチとなります。カーブラリア葉枯病は菌の繁殖力が強く、最悪の場合は芝生が全滅することもあるので、早めの対処が必要となります。
葉枯病は高温・多湿を好むため風通しの良い環境を作ることが必要です。また、刈高が低い芝生も好むため、芝刈り時に刈高を高くすると良いでしょう。
↓カーブラリア葉枯病について詳しくはこちら
ダラースポット病
発生芝種:日本芝 / 暖地型西洋芝 / 寒地型西洋芝
ダラースポット病は日本芝にも西洋芝にも発生する病気で、主に夏に発生します。窪んだ円形状のパッチができ、初期は緑がまだらになり赤茶色に変色・進行すると地下部まで侵され、土が剝き出しの状態になります。ダラースポット病の菌は、芝刈り機に付着して拡散するので注意しましょう。
ダラースポット病は、窒素が少ない土壌で発生しやすいので、適切な肥料管理を心がけます。また、芝刈り機などによって拡散するので注意が必要です。
↓ダラースポット病について詳しくはこちら
フェアリーリング病
発生芝種:日本芝 / 暖地型西洋芝 / 寒地型西洋芝
フェアリーリング病はキノコの菌で発生する病気で、芝生を育てていればよく発生する病気の一つです。フェアリーリング病の原因となるキノコは、約54種類にもなりますが、日本でよくみられるのは、チビホコリタケ、ヒダホコリタケ、シバフタケ、コムラサキシメジなどです。フェアリーリング病の最大の原因は、キノコの栄養源となるサッチ(有機物)の堆積です。
定期的にキノコの栄養源となるサッチ(有機物)を取り除くことで、キノコは育ちにくい環境を作り、フェアリーリング病を予防することができます。
↓フェアリーリング病について詳しくはこちら
殺菌剤を使うときの注意点
殺菌剤はローテーションして使用するのがポイント
上記にて芝生の病気の一部を紹介しました。他にも様々な芝生の病気がありますが共通して言えることは、芝生が病気になってしまったら、早めの殺菌作業と、これから病気にならないための予防の為の殺菌作業が必要となることです。また、同じ殺菌剤を連続して使用すると、殺菌剤に対して耐性は付いてしまうため、殺菌剤の種類をローテーションすることがポイントとなります。
主な殺菌剤の種類と主な効果
薬剤名 | 効果のある病気 |
---|---|
オーソサイド水和剤80 | 葉腐病、赤焼病 |
ダコニール1000 | 葉腐病 |
バリダシン液剤5 | 葉腐病 |
ロブラール水和剤 | 葉腐病 |
サプロール乳剤 | フェアリーリング病 |
セレンターフ水和剤 | 葉腐病 |
クリーングラス水和剤 | 葉腐病、擬似葉腐病 |
グラステン水和剤 | 葉腐病、葉枯病、擬似葉腐病、さび病 |
プレビクールN液剤 | ピシウム病 |
エメラルドDG | 葉枯病、ダラースポット病 |
※殺菌剤を使用する際には、商品の説明文をよく読んで間違った使用をしないように注意してください。
芝生の病気のまとめ
このページでは、芝生の病気について詳しく紹介しました。最後に、芝生の病気についてもう一度簡潔にまとめてみます。
芝生を長い間育てていると、かなりの確率で病気が発生します。病気になっていると気づかずに、手入れ方法が間違っていたと勘違いしてしまうこともよくありがちです。
芝生の病気は、早期発見・早期対策がポイントとなりますので、まずは病気の症状を理解しておき、早めに気付けるように心がけましょう。
参考記事
芝生の病気と予防・対処方法
ラージパッチ病【芝生の病気】
ブラウンバッチ病【芝生の病気】
春はげ症【芝生の病気】
象の足跡【芝生の病気】
赤焼病【芝生の病気】
雪腐病【芝生の病気】
さび病【芝生の病気】
カーブラリア葉枯病【芝生の病気】
ダラースポット病【芝生の病気】
フェアリーリング病【芝生の病気】
↓芝生のトラブルにつては下記ページも参考にしてください