綺麗な芝生を育てるためには、とても重要な芝生の更新作業。
芝生の更新作業とは、芝生の床土を耕す、土に穴を開ける、目土を入れる、サッチ(堆積物)を取り除くなどの作業を行い、土壌を改良し芝生が育ちやすい環境を作るための芝生の手入れのひとつです。
一度芝生を植えてしまうと、芝生の下にある土を耕すことは出来ないため、徐々に踏み固められて固くなった土の層が作られていきます。また、芝生を植えて数年が経つと、枯れて腐った芝が堆積してサッチの層を作り病害虫の被害に遭いやすくもなります。
これは芝生を長く育てていると必ず直面する問題で、このような状態が続くと、芝生は元気に成長することが出来なくなります。そしてこの状態を改善するためには、人の手によって定期的に手入れを行う必要があるのです。
このように、芝生が育ちやすい土壌の環境を取り除くための手入れを、芝生の更新作業と呼び、一般的には下記のような作業を行います。
更新作業の目的
芝生が育つ環境を取り戻す更新作業
更新作業の目的は、芝生を植えた時の土壌のように、芝生が育ちやすい土壌を、さまざまな手入れによって取り戻すことにあります。
芝生は他の農作物と違って一度植えてしまうと下の土を耕すことができません。そのため芝生を植えて年月が経過すると徐々に土が固くなってきます。そこで、芝生を植えたまま土を耕したり、土壌の微生物の活動を活性化させる目的で、エアレーションやコアリングなどを行います。
また、芝生の葉は他の植物と違って繊維質が非常に強いので、時間の経過とともに枯れた芝葉や芝刈り時の刈りカス(サッチ)が堆積していきます。このサッチは病気や害虫の原因となりやすいので、堆積したサッチを取り除くために、定期的にサッチングが必要となってきます。
上記のように、芝生を植えて年月が経過すると、徐々に芝生にとって良くない土壌環境になっていきます。そこで、芝生にとって良くない土壌を改善して、芝生が育つ健全な土壌を取り戻すなどの目的で更新作業を行います。
芝生の更新作業は芝生を植えたまま行うため、一度にすべての土を耕す事はできません。そこで、定期的に少しずつ更新作業を行う必要があります。
更新作業の時期
更新作業は、芝生の成長期に行います
暖地型芝生は成長期である春から初夏にかけて、寒地型芝生の場合は春と秋に更新作業を行うことが良いとされています。高麗芝を植えている芝生愛好家の方は、春に更新作業を行うことが多いようです。
私も高麗芝を植えていますので、新芽が出る少し前の3月から、低がりとサッチングを始めます。そして4月の中旬ごろまでに、エアレーショや肥料散布までが終わるように、数回に分けて週末作業をしています。
サッチング、エアレーション、スライシングは、年に一度だけ、この時期しか行いません。ただしコアリングや目土入れなどは、芝生の状態が悪い時に改善を促すために随時行うことがあります。
注意したいのは夏の更新作業です。更新作業は芝生を痛めつけて負担をかけることになるので、暑さで芝生が弱っている暑い時期は、更新作業を避けたほうが良いでしょう。
夏の更新作業は避けましょう
更新作業の方法
更新作業には様々な目的と方法があります
芝生の更新作業は、大きく分けて、サッチを取り除く作業、芝生の床土を耕す作業、芝生の成長を促す作業に別れます。ただし、エアレーション、スライシング、コアリングはどれも同じような効果があるので、どれか一つだけやる方だけでも良いと思います。
冬枯れした芝の低刈り(枯芝刈り)
芝の低刈りで更新作業が効率的にできる
芝生の更新作業を始める前に、まずは、冬の間に枯れてしまった芝生を短く刈り込みましょう。
暖かくなると新芽が生えてくるので、枯れた芝生を放置しておいても問題ないように思いますが、枯れた芝生は、サッチ堆積の原因となり排水性・通気性の低下や病害虫の原因となるため、更新作業の前に、通常よりも短めに芝刈りをすることで、サッチの堆積を防ぐことが出来ます。
また低刈りをしておくことで、これから行う更新作業が効率的になります。例えば、サッチングの際には芝生を短くしておく方が、堆積したサッチを取り除きやすいので効率的に作業できます。また目土を入れる際にも、短い芝生であれば隙間に目土を擦り込みやすくなります。
通常の芝刈りよりは短めに刈り込みましょう
低刈りの方法
刈高調整ができる芝刈り機を使いましょう
普段使っている芝刈り機を使って低刈りしてください。刈高調整が出来る芝刈り機は、刈高の設定を10m〜15mmに設定して刈り込んでください。※刈高の調整幅は芝刈り機によって異なります。
冬の間は、芝生の土壌を保護するために、長めに芝生を伸ばしていることもあると思います。リール式芝刈り機の場合は、長い芝生を一度に短く出来ないので、数回に分けて短く刈り込んでいきます。
↓芝刈りの方法はこちら
サッチング
排水性や通気性を復活させるサッチング
芝刈り時の刈りカスや、枯れた芝生が堆積した層を「サッチ」といいます。
芝生を長く育てていると、サッチは必ず堆積していきます。サッチは人為的に取り除かないと、排水性・水はけが悪くなる・病害虫が発生しやすくなるなど、芝生の成長を妨げる原因となります。
この堆積したサッチを取り除く作業を「サッチング」といいます。
サッチングにも様々な方法がありますが、一般的な「熊手」や「レーキ」などを使う方法は、中腰・前かがみの姿勢になりやすく非常に疲れる作業です。体力的にキツイと思われる方は「サッチングマシン」や「サッチ分解剤」などの便利な道具・薬剤を使用してはいかがでしょう。
サッチングの作業方法
- その1:金属製の熊手やレーキを使ってサッチを掻き出す(一般的な方法)
- その2:サッチングマシンを使ってサッチを掻き出す(道具購入の費用がかかる)
- その3:サッチ分解剤を使う(効果が出るまでに時間がかかる)
芝焼きでサッチを取り除く
サッチを燃やして取り除く芝焼き
枯れた芝生を燃やしてしまう「芝焼き」で、サッチを燃やして取り除く事ができます。また、芝生の成長を促し、新芽が出る時期を1週間程度早める効果もあります。
芝焼きは、岡山後楽園、奈良若草山、和歌山望楼、などの芝生でも、毎年恒例のイベントとなっているので、ご存じの方も多いでしょう。
芝焼きの作業は、消火の準備などを万全にして行う必要があります。周期に燃えやすい物がある芝生、住宅地密集地での芝焼きは、延焼の原因となりやすいので、避けたほう無難だと思います。
↓サッチングの方法はこちら
エアレーション
芝生に穴を開けて通気性をアップするエアレーション
芝生の床土は、人に踏まれたり水の侵食などで、徐々に固くなっていきます。そして固くなった土では、芝生の成長に必要な通気性排水性が維持できなくなり、綺麗な芝生を育てることが段々と難しくなっていきます。
そこで、エアレーション作業で芝生に穴を開ける事により、土壌の通気性や排水性を改善し、更に芝生の茎や新しい根の発生を促します。
エアレーションはゴルフ場でもよく使用されている芝生の更新作業の基本です。作業後に直ぐに効果が現れることはありませんが、長い期間に渡って密度が高い綺麗な芝生を維持するためには必要な手入れとなりますので、最低でも年に1回を目処に定期的に行ってください。
エアレーションの作業方法
- STEP-1:ローンスパイクやローンパンチを使って芝生に穴を開ける
- STEP-2:芝生に空いた穴に、デッキブラシなどを使って目土を入れる。
エアレーション作業後に目土入れを行う理由は、空いた穴により芝生の根が空気に直接触れるのを防ぐとともに、古くなった土壌に新しい土を入れることで、土壌中のバクテリアの活動を活性化させて芝生の成長を促すためです。土壌が固くなるのを改善することにも繋がります。
エアレーションの注意点として、芝生に穴を開け負担をかける作業となるため、夏の芝生が弱っている時期は避ける必要があります。芝生の成長期である春か秋に行うと良いでしょう。
↓エアレーションの道具や方法はこちら
スライシング
芝生の根を切り成長を促すスライシング
スライシングは「芝生の根切り」や「バーチカルカット」とも呼ばれており、ターフカッターなどを使って芝生の根を切る作業のことです。
芝生は土の中のランナーが水平方向に伸びることで成長するため、芝生を長く育てていると、芝生の根が伸びすぎで密集している状態となります。根が密集している状態では新しい根が出にくいので、スライシングで古い根を切ることにより新陳代謝を良くして、新しい根の成長を促します。
ローンスパイクやローンパンチを使ったエアレーションでも、根切りの効果はありますが、ターフカッターを使ったスライシングの方が、より根を切る効果が高いので、芝生の状態を観察して根が密集しているようであれば、スライシングをおすすめします。
↓スライシングの道具や方法はこちら
コアリング
古い土を抜き取り、新しい土を入れるコアリング
ローンパンチと呼ばれる専用の道具を使用して、床土の一部を抜き取り、新しい土を入れる「コアリング」と呼ばれる手入れの方法があります。
固くなった土壌では、通気性が悪く芝生が酸素不足になったり、排水性が悪くなり排水性のよい土壌を好む芝生が育ちにくくなります。そこで、固くなった土の一部をローンパンチで抜き出して、そこに目土を入れることで土壌を改良します。
コアリングによる土の入れ替えでは、一度に全部の土を入れ替えることは不可能ですが、毎年少しずつ土を入れ替えることで、やがですべての土を入れ替える事ができます。
- コアリングは3月末から4月中旬に作業する(高麗芝の場合)
- 固くなった土を抜き出し、新しい土を入れる
- 定期的に少しずつ入れ替えることで、常に新鮮な土壌を維持できる
- ローンパンチと呼ばれるコアリング専用の道具を使用する
- コアリングで空いた穴には、目土を入れる
- コアリングはエアレーションより作業は大変だが、効果は大きい
ローンパンチによるコアリングの方法
- STEP-1:芝生が伸びている場合は、芝生の低刈りをすることで、作業効率が上がります。
- STEP-2:ローンパンチを足で踏んで、芝生に穴を空けて土を抜き出す。(穴の間隔は5cm〜20cmを目安)
- STEP-3:抜き出した土を、ほうきやレーキなどで回収する。
- STEP-4:芝生に空いた穴に目土か目砂を入れる(根の乾燥を防ぐため)
- STEP-5:コアリング後は芝生が乾燥しやすいので、たっぷりと散水する。
↓コアリングの方法について詳しく見る
↓コアリングの道具はこちら
目土入れ
芝生の成長を促す目土入れ
目土入れとは、芝生の上から土や砂を薄くかける、芝生の手入れ方法の一つです。目土入れには、芝生の萌芽を促して密度の高い芝生を作ることができる効果あり、長期にわたって芝生の健全な成長を維持するためには、欠かすことができない大切な作業です
目土入れの方法
- STEP-1:芝生用の目土か目砂を用意する(ホームセンターなどで購入が出来ます)
- STEP-2:目土を「ふるい」に入れて、芝生になるべく均一にふりかけます。
- STEP-3:トンボやデッキブラシなどで目土を芝生に擦り込みます。
- STEP-4:芝生に凸凹がある場合は、凹んでいる部分に多めに目土をいれて平坦にします。
- STEP-5:目土入れ後は、たっぷりと散水をして目土を落ち着かせます。
目土入れのデメリット
目土入れを継続して行っていると、芝生面の高さがどんどん上がって行くので注意が必要です。例えば毎年3mmずつ目土を入れていくと、10年後には芝生面が現在より3cmも上がることになります。
これから芝張りの計画をされている方は、芝生面が上がる事を前提として、芝生を張る場所の計画を立てておくと良いでしょう。
↓目土入れの方法はこちら
肥料散布
定期的な肥料散布が必要となります。
芝生が成長するためには、十分な栄養成分が必要となりますが、庭などに植えられた芝生の場合は、自然の栄養成分が不足しやすくなるので、定期的に肥料を散布して、芝生の成長を促す必要があります。
芝生の肥料は、芝生の成長期に散布することが基本となりますが、成長期の少し前に散布することで、新芽が出る時期を早めることが出来ます。
私の場合は、芝生のシーズンが始まる少し前である3月末から4月の初旬に、固形の化成肥料を散布します。まずは効果が数ヶ月続く固形肥料をベースとして、必要に応じて液体肥料を散布するようにすることで、肥料散布のスケジュールを計画しています。
↓肥料散布の方法はこちら
芝生の更新作業のまとめ
芝生の更新作業は必ず良い結果として現れます。
芝生を長い期間に渡って綺麗な状態で維持するためには、このページで紹介したような様々な更新作業が必要になってきます。
このような更新作業は、作業後に直ぐに効果か現れるわけでは無いのでサボりがちになってしまいますが、長い目で見た場合には必ず良い結果として現れてきます。芝生の更新作業は、体力的にキツイ作業も多いので、一度にすべての作業を終わらすのではなく、春〜初夏にかけて少しずつ進めても大丈夫です。
芝生は、管理の手間をかければかけるだけ、綺麗で元気に育ってくれます。芝生の更新作業をコツコツと行って、芝生ガーデニングを楽しんでください。