はじめに
近年、緑豊かな美しい芝生を自宅で楽しみたいという方が増えています。特に、冬でも青々とした景観を保つ西洋芝は人気があります。しかし、西洋芝は種類が多く、それぞれに適した気候や土壌条件、管理方法が異なるため、ご自宅の環境に合った芝を選ぶことが大切です。
この記事では、日本の各地域に適した西洋芝の種類、植え付けから管理までの方法、注意点、失敗例、芝生の選び方、購入場所、費用について詳しく解説します。
地域別の西洋芝の種類
西洋芝は大きく分けて寒地型と暖地型に分類されます。寒地型は北海道や東北地方などの寒冷地に適しており、冬でも緑色を保ちます。一方、暖地型は関東以南の温暖な地域に適しており、冬は休眠して茶色くなります。
北海道
北海道では、寒地型の西洋芝であるケンタッキーブルーグラスが最適です。 ケンタッキーブルーグラスは寒さに強く、耐病性も高いため、北海道の気候に well-suited です。 特に、「ヌーブループラス」、「レジェンド」、「ミッドナイト」といった品種は、耐寒性や耐病性に優れ、美しい濃緑色の芝生に仕上がります。
ケンタッキーブルーグラスは、火山灰土壌の場合、堆肥を混ぜる必要があります。 また、土壌が薄い場合は、畑土を盛る必要があるなど、土壌作りが重要です。
東北地方
東北地方北部では、北海道と同様にケンタッキーブルーグラスがおすすめです。 東北地方南部では、ケンタッキーブルーグラスに加えて、日本芝の野芝も生育可能です。 野芝は、耐寒性が比較的強く、東北地方の気候にも適応できます。
ただし、寒地型の西洋芝は、ノシバやコウライシバに比べて、病害虫や乾燥に弱いため、注意が必要です。 特に、東北地方では、夏の暑さや冬の寒さが厳しいため、こまめな管理が重要となります。
関東地方
関東地方は、夏は暑く冬は寒いため、芝生の選択に悩む地域です。 常緑の芝生を維持したい場合は、ウィンターオーバーシードという方法があります。 ウィンターオーバーシードとは、夏に生育する暖地型の芝生に、冬に生育する寒地型の芝生を秋に重ねてまく方法です。 これにより、一年中緑の芝生を楽しむことができます。
中部地方
中部地方は、高地では寒地型、平地では暖地型が適しています。 高地では、ケンタッキーブルーグラスや野芝がおすすめです。 平地では、高麗芝やバミューダグラスが適しています。
関西地方
関西地方も、関東地方と同様に、夏は暑く冬は寒いため、ウィンターオーバーシードが有効です。 また、ペレニアルライグラスは、短期利用に適しており、耐暑性が向上した品種も出ているため、関西地方でも利用できます。 特に、耐暑性の弱い品種は、ウィンターオーバーシードに利用されます。
中国地方
中国地方も、関西地方と同様に、夏は暑く冬は寒いため、ウィンターオーバーシードが有効です。 高麗芝やバミューダグラスなどの暖地型西洋芝も利用できます。
四国地方
四国地方は、年中温暖なため、暖地型の西洋芝が最適です。 高麗芝やバミューダグラスがおすすめです。 ただし、寒地型の西洋芝を育てる場合は、プロの芝草管理スタッフ並みの管理が必要となります。
九州地方
九州地方も、四国地方と同様に、年中温暖なため、暖地型の西洋芝が最適です。 高麗芝やバミューダグラスがおすすめです。 特に、「ティフウェイ 419」というバミューダグラスの品種は、九州地方で広く使用されています。
沖縄地方
沖縄地方では、セントオーガスチングラスがおすすめです。 セントオーガスチングラスは、暖地型の西洋芝で、日陰にも強いため、沖縄地方の気候に適しています。 また、ノシバやコウライシバも沖縄地方でよく使われる芝生です。
地域 | 適した西洋芝の種類 | 備考 |
---|---|---|
北海道 | ケンタッキーブルーグラス | 寒さに強く、耐病性も高い。「ヌーブループラス」、「レジェンド」、「ミッドナイト」などの品種がおすすめ。 |
東北地方 | ケンタッキーブルーグラス、野芝 | 東北北部ではケンタッキーブルーグラスが最適。南部では野芝も可能。 |
関東地方 | 高麗芝、ウィンターオーバーシード | 夏は暑く冬は寒いため、暖地型と寒地型の両方が生育可能。 |
中部地方 | ケンタッキーブルーグラス、野芝、高麗芝、バミューダグラス | 高地では寒地型、平地では暖地型が適する。 |
関西地方 | 高麗芝、ウィンターオーバーシード、ペレニアルライグラス | 夏は暑く冬は寒いため、暖地型と寒地型の両方が生育可能。ペレニアルライグラスは短期利用やウィンターオーバーシードに適する。 |
中国地方 | 高麗芝、ウィンターオーバーシード | 夏は暑く冬は寒いため、暖地型と寒地型の両方が生育可能。 |
四国地方 | 高麗芝 | 年中温暖なため、暖地型が最適。 |
九州地方 | 高麗芝、バミューダグラス | 年中温暖なため、暖地型が最適。「ティフウェイ 419」などのバミューダグラスの品種がおすすめ。 |
沖縄地方 | セントオーガスチングラス、ノシバ、コウライシバ | 暖地型で、日陰にも強い。 |
西洋芝の植え付け方
西洋芝は、主に種子から育てます。ここでは、種子からの植え付け方法を解説します。
- 土壌作り: 西洋芝は水はけの良い土壌を好みます。 土壌が粘土質の場合は、砂や腐葉土などを混ぜて水はけを改善しましょう。 北海道でケンタッキーブルーグラスを植える場合は、火山灰土壌であれば堆肥を混ぜ、土壌が薄い場合は畑土を盛る必要があります。
- 整地: 土壌を耕し、石や雑草などを取り除いて平らにならします。
- 施肥: 元肥として、緩効性肥料を施します。
- 種まき: 種子を均一にまきます。 風の強い日は避け、種子が飛ばされないように注意しましょう。 ケンタッキーブルーグラスの種まきの目安は、1坪(3.3㎡)当たり100~200mlです。
- 覆土: 薄く土をかけ、種子と土を密着させます。
- 鎮圧: 板などを使い、種子と土を密着させます。
- 水やり: 種子が流れないように、優しく水やりをします。 発芽するまでは、土壌の表面が乾かないように注意しましょう。
- 発芽: 種まき後、7~14日で発芽します。 約20日後には発芽が終わります。 発芽が揃っていない場所があれば、追いまきをします。
- 時期: 西洋芝の種まきは、厳寒期(12~2月)と盛夏期(7~8月)を除けばいつでも行えます。
西洋芝の管理方法
西洋芝は、日本芝に比べてこまめな管理が必要です。 ここでは、西洋芝の管理方法を項目別に詳しく解説します。
水やり
西洋芝は、乾燥に弱いため、土壌の表面が乾いたら水やりをします。 特に、夏場は朝夕2回の水やりが必要です。 新しく芝を植えた場合は、根の部分までしっかりと水やりをすることが大切です。 芝生の端から枯れるのは、散水しているつもりでも乾燥していることが原因です。
芝刈り
西洋芝は成長が早いため、定期的な芝刈りが必要です。 草丈が5cm程度になったら、3cm程度に刈り込みましょう。 一度に短く刈り込みすぎると、芝生が弱ってしまうことがあるので注意が必要です。 また、切れ味の悪い刃を使うと、芝生を傷つけてしまうことがあります。 冬期は、刈高を上げ、芝生を長めに管理するとよいでしょう。
施肥
春と秋に、緩効性肥料を施します。 肥料のやりすぎは、肥料焼けを起こすことがあるので、使用量を守り、均一に施肥しましょう。
病害虫対策
西洋芝は、病害虫に弱いため、定期的な薬剤散布が必要です。 西洋芝に発生しやすい病気としては、葉腐病(ブラウンパッチ)、ダラースポット病、ピシウム病、赤焼病、フェアリーリング病などがあります。 薬剤散布は、芝生の状態や気温などを考慮して行いましょう。 特に、夏場の高温時は薬害が出やすいため注意が必要です。 エンドファイトという、芝の植物体内に共生する菌の働きで耐虫性も強くなっています。
害虫としては、コガネムシの幼虫による被害が挙げられます。 芝生に鳥が飛来し、嘴で芝生を突っつく場合は、コガネムシ等の幼虫がいる可能性があります。
エアレーション
土壌に穴を開け、通気性を良くすることで、芝生の生育を促進します。
サッチング
枯れた芝や根を取り除き、芝生の生育を促進します。
目土
芝生の表面に薄く土をまき、凹凸をなくします。夏場に目土を行うと、目土が高温になり芝生を傷めることがあるので避けましょう。
オーバーシーディング
オーバーシーディングとは、夏に生育する暖地型の芝生に、冬に生育する寒地型の芝生を秋に重ねてまく方法です。 これにより、一年中緑の芝生を楽しむことができます。 オーバーシーディングを行う際は、トランジションと呼ばれる、夏芝から冬芝への切り替わりの時期をスムーズにすることが重要です。
北海道での追加管理
北海道では、春と秋に種まきを行い、芝生のむらを補正します。 種は、複数種の種が入ったものをまき、環境や天候に一番適している種類が強く育つようにします。
西洋芝の管理における注意点と失敗例
水やり
- 水のやりすぎは、根腐れの原因になります。 土壌の状態をよく観察し、適切な量の水やりを心がけましょう。
- 水不足で芝生が枯れてしまうことがあります。 特に、夏場は乾燥しやすいため、注意が必要です。
- 水やりの頻度が多すぎると、根が弱くなってしまいます。
芝刈り
- 一度に短く刈り込みすぎると、芝生が弱ってしまうことがあります。 軸刈りをしてしまい、芝生が枯れてしまうこともあります。
- 切れ味の悪い刃を使うと、芝生を傷つけてしまうことがあります。
施肥
- 肥料のやりすぎは、肥料焼けを起こすことがあります。 使用量を守り、均一に施肥しましょう。
- 肥料不足で芝生の生育が悪くなることがあります。
病害虫
- 病気や害虫の発生に気づかず、芝生が枯れてしまうことがあります。
- 薬剤散布の時期や方法を誤ると、薬害が発生することがあります。
その他
- 夏休みなどで家を空けている間に、芝生が枯れてしまうことがあります。
- 高温多湿の環境下では、芝生が弱りやすいため、注意が必要です。 夏越し対策として、日中の暑い時間帯に寒冷紗をかけたり、扇風機で風を送ったりするのも有効です。
西洋芝の選び方
西洋芝を選ぶ際には、以下の点を考慮しましょう。
- 地域: お住まいの地域の気候に合った種類を選びましょう。 寒地型と暖地型があり、それぞれ適した地域が異なります。
- 用途: 庭で遊ぶ、景観を楽しむなど、用途に合った種類を選びましょう。
- 管理の手間: こまめな管理ができるか、管理の手間が少ない種類が良いかなど、ライフスタイルに合った種類を選びましょう。 西洋芝は、日本芝に比べて管理の手間がかかる傾向があります。
- 葉の質感: 柔らかな質感、硬い質感など、好みの質感の芝を選びましょう。 西洋芝は、一般的に日本芝よりも葉が細く、柔らかな質感です。
- 色: 濃い緑色、明るい緑色など、好みの色の芝を選びましょう。 西洋芝は、一般的に日本芝よりも緑色が濃いです。
西洋芝の購入場所
西洋芝は、以下の場所で入手できます。
- ホームセンター
- 園芸店
- ネット通販
- 種苗会社
- 西洋芝専門の通販サイト
西洋芝の費用
西洋芝の費用は、種類や購入場所、施工方法によって異なります。
- 種子: 1kgあたり3,000円~6,000円程度
- 芝苗: 1m²あたり2,000円~3,800円程度
- 施工費: 1m²あたり3,000円~6,000円程度
- 目土: 1m²あたり500~800円程度
- 土壌改良: 土壌の状態によっては、土壌改良が必要になります。 費用は、芝苗代と同程度かかります。
西洋芝の種類
ケンタッキーブルーグラス
ケンタッキーブルーグラスは、寒地型の西洋芝で、世界中で最も多く栽培されている芝生です。 日本では北海道でよく使われています。 病気に強く、踏圧にも強いですが、高温乾燥には弱いです。
ベントグラス
ベントグラスは、寒地型の西洋芝で、ゴルフ場のグリーンによく使われています。 葉が細く短く密集しており、まるで高級絨毯のような芝生になります。 地際近くの低刈りにも耐え、緻密な芝生を形成します。 しかし、日本の高温多湿には弱く、管理に手間がかかります。
フェスク
フェスクは、寒地型の西洋芝で、寒地型の中では最も高温に強く、丈夫です。 葉が幅広い「トール・フェスク」と葉が細い「ハード・フェスク」があります。 乾燥にも強く、扱いやすい種類です。
セントオーガスチングラス
セントオーガスチングラスは、暖地型の西洋芝で、日陰にも強く、雑草にも強いという特徴があります。 葉は幅広く、ふかふかしています。
日当たりや水はけが悪い場所でも育ちやすい西洋芝
日当たりや水はけが悪い場所でも育ちやすい西洋芝としては、セントオーガスチングラスが挙げられます。 セントオーガスチングラスは、暖地型の西洋芝で、日陰や湿気に強く、雑草にも強いという特徴があります。 葉は幅広く、ふかふかしていますが、 やや粗い見た目です。 また、耐寒性が低いため、寒冷地での生育は難しいです。
まとめ
西洋芝を植える際には、地域に合った種類を選び、適切な植え付けと管理を行うことが大切です。この記事を参考に、美しい西洋芝の芝生を作ってみましょう。
西洋芝は、日本芝に比べて、冬でも緑色を保つなど、景観に優れていますが、その分、管理に手間がかかります。水やり、芝刈り、施肥、病害虫対策など、こまめな管理が必要です。
西洋芝の種類も豊富で、それぞれに特徴があります。ご自宅の環境やライフスタイルに合った西洋芝を選び、美しい芝生を楽しみましょう。ソースと関連コンテンツ