はじめに
青々とした美しい芝生は、庭に安らぎと開放感をもたらす魅力的な要素です。DIYで芝生を張ることは、一見難しそうに思えるかもしれませんが、適切な知識と準備があれば、初心者でも十分に可能です。この記事では、芝生を張るために必要な道具、手順、芝の種類、そして芝生の育て方について、詳細に解説していきます。
芝生の種類
芝生には、大きく分けて日本芝と西洋芝の2種類があります。それぞれの特徴を理解し、自分の庭に合った芝生を選びましょう。
日本芝
日本の気候に合っており、関東から西の地域では最も育てやすい種類です。 冬は休眠期に入るため色が茶色になってしまいますが、春になると再び緑色に戻ります。
- 高麗芝 :日本で最も一般的な芝生です。丈夫で育てやすく、乾燥にも強いのが特徴です。 葉幅が狭く密度も高いため、定期的に芝刈りをし、手入れをしっかりと行うことで、美しい芝生にすることができます。 踏み圧や耐乾性も強いため、ゴルフ場のグリーンでも使用されることも多い品種です。
- 野芝 :野生種に近い芝生で、踏み圧に強く、暑さ寒さにも耐える芝生です。 ゴルフ場のラフなどに使用されています。 感触が荒いのが特徴で、個人宅の芝生としてはあまり使われない品種です。
- 姫高麗芝 :日本芝の中では特に葉幅が細くて柔らかく、緑化期間を長く楽しめる品種です。庭園や公園、ゴルフ場のグリーンなど、広く利用されています。 一般的な高麗芝よりも色が鮮やかで密集性が高いため、こまめに刈り込むことにより、美しい芝生をつくることができるでしょう。
西洋芝
芝生のキメが細かく、緑色が濃いのが特徴です。 主にゴルフ場などで使用されている品種で、鮮やかな緑が楽しめます。 西洋芝は、バミューダグラス、フェスク、ケンタッキーブルーグラスなどにさらに細かく分けられます。
- バーミューダグラス :ゴルフ場や競技場によく使われている芝生です。日当たりの良い所でよく育ち、耐暑性、耐乾燥性に優れ、踏圧・繁殖力に強く損傷からの回復が早いのが特徴です。
- ケンタッキーブルーグラス :緑が濃いのが特徴で人気があります。年中緑の芝生で、寒地型の芝の中では発芽適温が若干高めの芝種です。 冷涼地に適していて、ゴルフ場のフェアウェイなどでよく利用されています。 耐暑性・耐病性がありますが、夏の管理には注意が必要です。
- ペレニアライグラス :発芽と初期生長の早さが特徴で、葉裏に光沢があり播種から比較的短期間で芝生をつくれる芝として人気があり、オーバーシーディングにもよく利用されます。
芝生の選び方のポイント
- 育てやすさ: 初心者の方は、日本芝がおすすめです。 特に高麗芝は、日本の気候に合っていて丈夫なので、初心者でも育てやすいでしょう。
- 見た目: 西洋芝は、日本芝に比べて、緑色が濃く、きめ細かいです。 しかし、高温多湿の日本の気候に弱いため、夏越しが難しいという側面もあります。
- 用途: 芝生を張る場所の環境や用途に合わせて選びましょう。 例えば、子供が遊ぶ場所には、丈夫で踏み圧に強い高麗芝や野芝が適しています。
- 気候: 暖地型と寒地型があり、住んでいる地域に合った種類を選ぶ必要があります。 関東以西では暖地型、東北や北海道では寒地型が適しています。
- メンテナンス: こまめな手入れに時間をかけられる場合は西洋芝、週末のみなどの場合は日本芝がおすすめです。
芝生を張るために必要な道具
芝生を張る作業をスムーズに進めるためには、いくつかの専用の道具が必要です。それぞれの道具の用途と使い方を理解しておくことが、美しい芝生を作るための第一歩となります。
道具 | 用途 | 使い方 | 初心者向けアドバイス |
---|---|---|---|
スコップ | 土を掘り起こしたり、混ぜたり、移動させたりする | 土を掘る・穴を掘る・土を混ぜる際に使用します。 | 複数のサイズがあると便利です。大きなスコップは土を掘り起こす際に、小さなスコップは目土を埋め込む際に役立ちます。 |
レーキ | 土壌を平らにならしたり、石やゴミを取り除いたりする | 土を均したり、石やゴミを取り除く際に使用します。 | 軽量で扱いやすいものを選びましょう。 |
トンボ | 土の表面を細かく砕いたり、平らにならしたりする | 土を細かく砕いたり、土を均す際に使用します。 | 幅の広いものと狭いものがあると便利です。広いものは土を均す際に、狭いものは隅の土を均す際に役立ちます。 |
ローラー | 張り終えた芝生を圧着させる | 芝生の上を転がし、地面に密着させるために使用します。 | レンタルも可能です。購入する場合は、保管場所を考慮しましょう。 |
芝刈り機 | 芝生を刈り込む | 芝生の高さを均一に保つために使用します。 | 手動式と電動式があります。電動式は広範囲の芝刈りに便利です。 |
じょうろ | 芝生に水をまく | 芝生に水を供給するために使用します。 | 広範囲に水をまく場合は、散水ホースと併用しましょう。 |
散水ホース | 広範囲に水をまく | 芝生全体に効率的に水をまくために使用します。 | スプリンクラーがあると便利です。 |
目土 | 芝生の隙間を埋める | 芝生の間に詰めて、根付きを良くし、雑草の発生を抑えるために使用します。 | 芝生用の目土を使用しましょう。 |
肥料 | 芝生の生育を促進する | 芝生に栄養を与えるために使用します。 | 芝生用の肥料を使用しましょう。 |
クワ | 土を耕す | 土を掘り起こし、土壌を柔らかくするために使用します。 | スコップと併用して使用すると便利です。 |
鎌 | 雑草を刈り取る | 雑草を根元から刈り取るために使用します。 | 雑草の種類によっては、鎌よりも草取り道具の方が効果的な場合があります。 |
軍手 | 手を保護する | 作業時に手を保護するために使用します。 | |
メジャー | 距離を測る | 芝生を張る面積を測るために使用します。 | |
杭 | 芝生を張る範囲を示す | 境界線に沿って打ち込み、芝生を張る範囲を明確にするために使用します。 | |
糸 | 直線を出す | 杭と杭の間に張って、直線を出すために使用します。 |
芝生張りの手順
芝生張りの作業は、以下の手順で行います。
- 土壌の準備:
- 雑草を根から取り除きます。根が残っていると、後々雑草が生えてくる原因になります。
- スコップなどで土を掘り起こし、石やガラなどを取り除き、土を柔らかくします。
- 土壌を耕す際は、深さ20~30cmほど掘り起こし、目立つ小石は取り除いておきましょう。
- 下地がデコボコしていると、雨が降ると表面に水たまりができてしまいます。そうならないためにも、芝生を張る部分の整地をすることが何よりも重要です。
- 整地:
- 土壌を平らにならし、水はけをよくするために傾斜をつけます。 芝生の外側が低くなるようにゆるく傾斜をつけるのがコツです。 これは芝生の上に水が溜まらないようにするためです。 雨が降ったときなどに排水できないと、根腐れを起こしてしまうかもしれません。
- 水はけが悪いようなら砂を追加します。 ふるいを利用し小石なども取り除きましょう。
- 芝張り:
- 芝生を並べていきます。芝生の張り方には、「べた張り」「目地張り」「市松張り」「すじ張り」の4つの方法があります。
- べた張り: 隙間なく芝を敷き詰める方法です。仕上がりも綺麗ですが、目地張りと比べて約1.5倍の芝生が必要になります。
- 目地張り: 芝生と芝生の間に3~5cmの隙間をあけて張る方法です。べた張りより2割減くらいの芝生の量で済むのでコストカットになります。
- 市松張り: 市松模様に芝生を張っていく方法です。 べた張りと比べて半分の芝生で済みます。
- すじ張り: 5~10cm幅に切った芝生を5~10センチの隙間をあけてストライプ状態に1列ずつ張る方法です。法面などの傾斜部分に適しています。
- 張り方に関わらず、目地が十字にならないように、レンガを積み上げるようにずらしながら張っていくことがポイントです。
- 古い芝生を張り替える場合は、新しい芝生を張る前に、古い芝生をスコップやターフカッターで取り除き、土壌を整えましょう。
- 芝生を並べていきます。芝生の張り方には、「べた張り」「目地張り」「市松張り」「すじ張り」の4つの方法があります。
- 目土:
- 芝生の隙間を目土で埋めます。 目土は、芝生の生長に役立ちます。
- 目土は芝生の葉先が隠れない程度にかけましょう。
- 鎮圧:
- ローラーなどで芝生を圧着させ、根付きを良くします。 これを「圧着」といいます。
- 散水:
- 十分に水をまきます。 芝生の根が張るまでは目土が乾燥しないようにたっぷり散水をして、なるべく芝生へは立ち入らないようにしてください。
初心者向けのアドバイス
- 芝生を張る前に、土壌の状態をよく観察し、必要であれば土壌改良を行いましょう。
- 芝生を張る時期は、春か秋が適しています。 特に梅雨を迎える前の3月中旬〜5月末がおすすめです。
- 水やりは、芝生の根がしっかりと張るまで、毎日行いましょう。
芝生の育て方
芝生を美しく保つためには、適切な育て方が必要です。
水やり
- 水やりは、芝生の生育に欠かせない要素です。
- 春と秋は2~3日に1回、夏は毎日1回を目安に水やりをします。 冬は1週間に1回を目安にしましょう。
- 土の表面だけでなく、根までしっかりと水が行き渡るように、たっぷりと水をやりましょう。
- 気温が高く日差しの強い時期は乾燥に気をつけて、比較的涼しい朝に水やりを行います。
肥料
- 芝生は、お互いの根が絡み合い密集しているので、肥料を吸収しにくい状況になりやすく、生育が衰える原因となる場合があります。
- 美しい芝生を楽しむためには、適期に適量の施肥が欠かせません。 施肥の時期は、3月頃、6月頃、8月頃の3回が基本です。
- 窒素(N):リン酸(P) :カリウム(K)=8:8:8程度の芝生用の肥料を1平方メートル当たり30g程度撒きます。
芝刈り
- 芝刈りは、芝生の美観を保つだけでなく、芝生の健康を維持するためにも重要です。
- 定期的に刈り込むことで、健康な芝生を育てることができます。
- 芝が伸びてきたら、2~3cm程度の高さになるように刈り込みます。 春から秋にかけては2~3㎝くらいに刈り、元気がない時や冬越しさせる時は3~3.5㎝くらいに刈るのがおすすめです。
- 5~6月、9~10月頃は月に1~2回。生長がもっとも早い7~8月頃は月に2~3回を目安に刈り込みましょう。
雑草駆除
- 美しい芝を保つため、雑草はこまめに除去しましょう。
- 見つけたらすぐに手で抜き取るのが一番いい方法です。
- 手で取りきれない場合は定期的に芝生用の除草剤を使用しましょう。 雑草の発芽を抑えるタイプの土壌処理剤と、生育した雑草を枯らす茎葉処理剤の2種類があります。
エアレーション
- 芝生は一度植えてしまうと耕せないので、時間がたつと土が固まり、通気性が悪くなってしまいます。
- そのため、ローンスパイクなどの道具を使い、芝生に穴を開けていきます。 穴を開けることで、土壌のバクテリアを活発化させる効果も期待できます。
- 年に一度はエアレーションして、きれいな芝生を保ちましょう。
サッチング
- サッチとは、芝生の生育過程で発生する、枯れた葉や根などの有機物の層のことです。
- サッチが蓄積すると、水はけや通気性が悪くなり、芝生の生育を阻害する原因となります。
- 新しい芝生の生長を促すために年に一度はサッチングし、取り除いていきましょう。
- レーキやほうきを使って枯れたサッチを集めます。 サッチ分解剤やサッチングマシンを使用する方法もあります。
病気と害虫
- 芝生には、様々な病気や害虫が発生する可能性があります。
- 夏の高温多湿や水はけが悪い場所、サッチ(刈りかす)がきちんと片づけられていないなどが原因で発生します。
- 芝生のところどころに円形で淡褐色にはげてきている場合は、「ブラウンパッチ」という病気の可能性があります。
- 病気や害虫の予防としては、水のやりすぎに注意し、芝刈りの後は刈りカスをしっかり処分することが大切です。
- 害虫・病気を発見したら、早期の対応をお勧めします。 病気が発生したら園芸店・DIY店などで入手できる殺菌剤などを使って対処しましょう。
土壌のpH
- 芝生の枯れたり、病気の発生は、日照不足や水分、肥料などの様々な原因が考えられますが、土壌の酸度が原因の場合があります。
- 芝の種類により好む土壌の酸度は若干異なりますが、一般的に弱酸性(pH6.0~6.5)の土壌を好みます。
- pHが7.0を超えると、病気の発生や芝生の生育が悪くなります。
芝生を張る上での注意点
- 芝生を張る作業は、土壌の準備から始まり、芝張り、目土、鎮圧、散水と、多くの工程があります。
- 各工程を丁寧に行うことで、美しい芝生を長く楽しむことができます。
- 特に、土壌の準備は、芝生の生育を左右する重要な要素となります。
- 水はけや日当たり、土壌のpHなどを考慮し、適切な土壌作りを行いましょう。
- また、芝生の種類によって、育て方や必要なメンテナンスが異なります。
- 自分のライフスタイルや庭の環境に合わせて、適切な芝生を選び、適切な管理を行いましょう。
まとめ
この記事では、芝生を張るための道具、手順、種類、そして育て方について解説しました。芝生を張ることは、決して簡単な作業ではありませんが、この記事を参考にして、美しい芝生を作ってみましょう。
美しい芝生は、庭に緑の絨毯を敷き詰めたような、爽快な景観をもたらします。 芝生の上で寝転んだり、子供と遊んだり、バーベキューを楽しんだり、芝生があることで、庭での過ごし方がより豊かになるでしょう。