頃、環境問題への意識の高まりから、リサイクルや再利用が注目されています。 家庭でできる身近な再利用の一つに、芝生の再利用があります。 芝生は、定期的に刈り込みを行うことで美しい景観を保つことができますが、刈り取った芝生はどのように処理されていますか? 多くの方は、燃えるゴミとして処分しているのではないでしょうか。
しかし、刈り取った芝生は、実は様々な方法で再利用することができます。 この記事では、芝生の再利用方法とその利点について詳しく解説し、環境問題への貢献と、より良いガーデニングライフの実現を目指します。
芝生の再利用方法
芝生の再利用方法は、大きく分けて以下の4つがあります。
Method | Description | Benefits | Examples |
---|---|---|---|
堆肥化 | 刈り取った芝生を微生物の力で分解し、堆肥にする | 土壌に栄養を与える、ゴミの量を減らす | 家庭菜園の肥料 |
マルチング | 刈り取った芝生を植物の根元に敷く | 地温や地湿の急激な変化を防ぐ、雑草の抑制、病気の予防 | トマトなどの野菜 |
土壌改良 | 芝生を土に混ぜ込む | 土壌の通気性を良くする、水はけを改善する | 庭の土壌改良 |
移植 | 剥がした芝生を別の場所に植え替える | 芝生の面積を増やす、生育の悪い部分を補修する | 庭の芝生張り替え |
1. 堆肥化
刈り取った芝生を堆肥化することで、土壌に栄養を与えることができます。 堆肥化の手順は以下の通りです。
- コンポストの用意: 市販のコンポストや、自作のコンポストを用意します。
- 土壌の投入: コンポストに、家庭菜園で使い終わった土壌などを投入します。
- 芝生の投入: その上に、刈り取った芝生を2~3cmの厚さに重ねていきます。
- 分解促進: 分解を促進させるために、微生物資材(カルスNC-RやPulse NC-Rなど)や米ぬかをふりかけます。
- 水分補給: 水をたっぷり与え、土でサンドします。
- ミルフィーユ状に: 3~5の工程を繰り返し、材料をケーキのように重ねていきます。
- 熟成: コンポストを放置して熟成させます。 熟成期間は、コンポストの種類や材料、環境条件によって異なり、約3ヶ月~半年ほどで堆肥になります。
約半年後には、芝生が分解され、しっとりふわふわな堆肥に生まれ変わります。 この堆肥は、家庭菜園の肥料として活用することができます。
2. マルチング
マルチングとは、植物の根元に敷き藁や刈り草などを敷くことで、地温や地湿の急激な変化を防ぎ、雑草の抑制や病気の予防をすることです。 刈り取った芝生をマルチング材として活用することで、これらの効果に加えて、芝生に含まれる栄養分を土壌に還元することができます。
マルチングに適した作物としては、トマトなどが挙げられます。 トマトは、雨の跳ね返りによって病害虫が発生しやすいため、マルチングによって土壌からの跳ね返りを防ぐことで、病気の予防に繋がります。
3. 土壌改良
芝生を土壌に混ぜ込むことで、土壌改良材として活用することができます。 芝生は、土壌の通気性を良くし、水はけを改善する効果があります。 また、芝生に含まれる有機物が、土壌中の微生物の活動を活発化させ、土壌を豊かにします。
コアリングによる土壌改良
土壌改良の方法の一つに、コアリングという方法があります。 コアリングとは、芝生が生えた状態で部分的に穴をあけ、土を抜き取り、新しい土や砂を投入する方法です。 この作業によって、土壌の通気性と水はけが改善され、芝生の生育が促進されます。
4. 移植
芝生を別の場所に植え替えることで、芝生の面積を増やしたり、生育の悪い部分を補修したりすることができます。 移植の手順は以下の通りです。
- 芝生の剥がし: 移植したい芝生にスコップなどを使い、深さ20cmほど切れ目を入れます。 30~40cm程度の正方形に切れ目を入れて、スコップで芝生を剥がしていきます。
- 土壌の準備: 植え替え先の土壌に、石や雑草を取り除き、必要であれば土壌改良材などを混ぜて、平らにならします。
- 芝生の植え付け: 剥がした芝生を植え付けます。芝生の根が張るまでは、乾燥しないように水やりを十分に行います。
芝生の張り方
芝生を張る際には、いくつかの張り方があります。
- べた張り: 芝生を隙間なく敷き詰める方法。仕上がりが綺麗ですが、多くの芝生が必要になります。
- 目地張り: 芝生と芝生の間に隙間を作る方法。べた張りよりも芝生が少なくて済みます。
- 市松張り: 市松模様に芝生を張る方法。べた張りの半分の芝生で済みます。
- すじ張り: 細長く切った芝生を、間隔をあけてストライプ状に張る方法。
芝生の再利用による利点
芝生の再利用には、以下のような利点があります。
- 持続可能性:
- 廃棄物削減:燃えるゴミとして処分していた芝生を再利用することで、ゴミの量を減らすことができます。
- 資源の有効活用:芝生を堆肥や土壌改良材として再利用することで、資源を有効活用することができます。
- CO2削減:ゴミの焼却時に発生する二酸化炭素の排出量を削減することができます。
- 環境面:
- 化学肥料・農薬の削減:堆肥として利用することで、化学肥料や農薬の使用量を減らすことができます。
- 生物多様性の保全:芝生の刈り高を調整することで、昆虫などの生物の生息環境を保全することができます。
- 経済面:
- 堆肥や土壌改良材の購入費用を節約することができます。
- 芝生の処分費用を節約することができます。
- 天然芝は人工芝に比べて初期費用が安く、長期的に見ると経済的です。
- 社会面:
- 地域の緑化活動に貢献することができます。
- 環境問題への意識向上に繋がります。
- 芝生は、子どもたちの遊び場や憩いの場を提供し、地域コミュニティの活性化に貢献します。
- 緑豊かな環境は、人々の心を癒し、集中力や創造性を高める効果も期待できます。
人工芝の環境負荷
一方、人工芝は、主にポリエチレンやナイロンなどの合成樹脂でできており、環境への負荷が懸念されています。 人工芝は、紫外線や使用による劣化によってマイクロプラスチックを発生させ、土壌や水質汚染を引き起こす可能性があります。 また、人工芝は、天然芝に比べて地温が高くなりやすく、ヒートアイランド現象を悪化させる可能性も指摘されています。
芝生の再利用事例
- 長野県: 長野市開発公社では、スポーツガーデンで発生する廃棄芝を再利用し、安価に芝生化を行う「リバーフロント方式」を提唱しています。 この方式は、廃棄芝をコア(芯)として利用し、新しい芝生を植え付けることで、芝生造成費用を低減することができます。 また、コアは再利用が可能であるため、環境にも優しい方法です。
- 神奈川県: 小田原市では、都市デザインの専門家と学生、行政が連携し、空き地の活用方法を探るイベント「芝活」を開催しました。 このイベントでは、レジャーシートや椅子づくり、紙芝居、水遊びなど、芝生を使った様々なアクティビティを通して、公共空間の活用方法を検討しました。
芝生の手入れと再利用
美しい芝生を維持するためには、定期的な手入れが必要です。 芝生の手入れの一つに、サッチングという作業があります。 サッチングとは、芝生の表面に溜まったサッチ(枯れた芝生や根など)を取り除く作業です。 サッチを取り除くことで、芝生の通気性や水はけが良くなり、健全な生育を促進することができます。 また、サッチを堆肥化することで、再利用することも可能です。
家庭でできる芝生の再利用
家庭でも、簡単に芝生の再利用を実践することができます。
- 堆肥作り: 上記で紹介した手順で、刈り取った芝生を堆肥化することができます。
- マルチング: 家庭菜園や花壇で、刈り取った芝生をマルチング材として活用することができます。
- 土壌改良: 庭の土に芝生を混ぜ込むことで、土壌改良材として活用することができます。
地域・行政による芝生の再利用促進
芝生の再利用を促進するためには、地域や行政による支援も重要です。
- 啓発活動: 芝生の再利用方法や利点に関する情報を、広く普及啓発する必要があります。
- 技術開発: 芝生の再利用をより効率的に行うための技術開発が必要です。
- 制度整備: 芝生の再利用を促進するための制度を整備する必要があります。
- 地域住民への支援: 芝生の施工や管理に関する技術指導や、管理機材の貸し出しなどの支援を行うことができます。
- 企業との連携: 企業のCSR活動として、芝生の再利用を促進するための取り組みを支援することができます。
結論
芝生の再利用は、環境問題への貢献だけでなく、ガーデニングライフの充実にも繋がる有効な手段です。 堆肥化、マルチング、土壌改良など、様々な方法で芝生を再利用することで、ゴミの削減、資源の有効活用、そして美しい景観の維持に貢献することができます。 また、芝生の再利用は、循環型社会の実現にも繋がる重要な取り組みです。 家庭でも簡単に取り組める方法も多く存在するため、ぜひこの機会に芝生の再利用を始めてみてはいかがでしょうか。
より詳しい情報については、地域の自治体や園芸関連のウェブサイトなどを参考にしてください。